2017年8月。今年も南半球のトンガのババウ諸島に帰って来た。
今年で5年目のババウ滞在、6週間滞在している。
細かく言えば島にも変化はあるものの、特に大きな変化のない風景と現地の人に逢うことにほっとした。
ババウに来て4日目。
島に来てからはなかなか天気はすぐれなかったものの、4日目の8月18日は、青空が広がった。
最初、クジラ捜索エリアの一番南に位置するMANINITA島付近で、親子とエスコート(父親ではないオス)を見つけた。
入水してみると、船上から見ているよりもはるかに透明度は悪く、海水の色は緑色で5m先もあまり見えないような状況だった。
親子とエスコートも止まる様子もなく、泳ぎ去ってしまったので、船に戻ろうとすると横で大きなブローの音が聞こえた。
別の3~4頭のクジラがヒートラン(交尾を狙うための行為)をしていた。
MANINITA島の南にはリーフがあって、そこに打ち付ける波は、この時サーフィンが出来そうなくらいの高波になっていた。
親子とエスコ―トはそのリーフの上に移動してしまい、更にヒートランはそのリーフむかって泳いでいたので、人間が近付くことは、これ以上叶わなかった。
仕方がないので、これらのクジラは諦めて、別のを探しに行こうとするが、この日はババウ島全体でクジラとの遭遇が渋く、どの船もよくないと連絡がはいっていた。
そんな中、1隻の船から、「テールを上げて止まっているクジラがいる」と連絡をもらい、そのクジラの順番待ちをさせてもらえることになった。
他に泳げるクジラはいないかと探しながら、MANINITA島から少し北に位置するそのエリアに向かった。
遠くにそのテールを上にしているクジラが見えてきた。
想像はしていたものの、やはり、なんだか……変(笑)
テールが天日干しされていた。
正しくは“天日干し”ではないだろうけど、私にはどうしてもテールを乾かしているようにしか見えなかった。
「あのテール、乾かないのかな……」と思っていると、徐々に斜めになって、最終的にはパタンと倒れた。
そしてはっと気が付いたかのように少し泳いで、息継ぎをして、またテールを上にして、天日干し……いや、休憩を始めた。
「水中でどうなっているのか見てみたい……」
それから約1~2時間待ち、やっと水中に入れることになった。
いつ動き出すかわからなかったのと、あのテールが突如頭上に降って来る恐れがあることが、一番の心配事だった。
そして、この日のスキッパーのナティ曰く、テールを上にしているクジラは「妊娠している」とのことだったので、妊娠中のクジラがどういう動きをするのか知らなかったことも、懸念材料ではあった。
「むやみに近づかないこと、驚かさないこと、そして、テールや長い腕には気を付けること」をゲストに伝え、入水した。
(テールが目の前にあるとこのくらいの大きさになる。実際は写真よりも大きい)
クジラのテールや胴体の内側を、こんなに近くで観察した経験はあっただろうかと自問自答してみたが、答えは見つからなかった。
たぶん、ここまで近くで長時間クジラを観察し、撮影することは今までなかったように思えた。
妊娠中だというので、お腹のぽっこりした感じを撮影したかった。
が、入水してわかったことは、このクジラ、反時計回りに回転していた(笑)
人がいるのをわかっているかのように、お腹側に回って撮影していると微妙に動いていた。
(徐々に身体をひねらせながら回転している)
クジラにとってはスローな回転でも、その1/10ほどの大きさの人間にとっては大移動になる。
お腹側から撮影したかったので、ゲストと共に、クジラの回転にあわせて動いていたら、あっと言う間に一周することがわかって、途中で面白くなってしまった。
(ゲストとクジラのテール)
テールが水面の上に出ていて、胴体が水面下にあるので、半水面で、かつお腹の丸みがわかるような角度を狙って撮影してみた。
(心なしか、お腹がぽっこりしているような気もする)
ただ、正直なところ、少し丸っこかったり、太っているように見えるクジラは、だいたいこのくらいの丸さのように感じたので、このクジラが本当に妊娠しているのかは、定かではない。
だが、倒れたテールを立て直し、ゆっくり移動する姿はほかのクジラより機敏さがないので、やはり妊娠しているのかもと思わせた。
(人が写り込むと大きさの比較が明らか。テールがに注意しないといけないということが一目瞭然)
スキッパーのナティに、「妊娠しているクジラはみんなあのようにテールを上にして、休むようなことをするのか」と聞いたら、「全部ではないけれど、赤ちゃんにいいからあのような行動をとるクジラもいる」「人も逆子になるのと同じように、クジラも反対向きになったりしているのが治る」のようなことを言っていた。
さらに、このような行動をしてからは、数日か数週間の間に子供を産むことが多いというので、来週あたりにもしかしたら、生まれたての小さな子供を連れて泳いでいる姿が見られるかもしれないと期待しながら、観察していた。
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フルーク(テールの模様)も撮影したので、もしこのメスが、子供を連れている場面に遭遇したら、またレポートしようと思っているが、9月10日現在、このクジラは目撃していない。