Dangerous whaleに出逢った、2017年8月30日
「Dangerous whale, be carful」
携帯を見ると、メッセージが入っていた。
2017年8月30日、私はストライカ、越智さんはリサマリ、岡田さんはマレスキングに分かれて乗船していた。
朝一番で、2頭のクジラと泳いでいるという情報が無線からはいっていた。
マレスキングは朝一でこのクジラの順番待ちに入ったが、この時すでに数隻が順番待ちをしていたので、ストライカは行列が出来ているクジラには並びたくないと自分たちでクジラを探していた。
しかし、この日、いいクジラがババウ中であまり見つからず、泳げるクジラというのが、この2頭のクジラのみと言っても過言ではない状況だった。
一日中船を走らせたがブローが1つも見つからず、最終的には全部の船がこのクジラの順番待ちをすることになった。
ストライカも結果的にはこのペアの順番待ちにはいったが、すでに一番最後。
自分たちの前に10隻以上の行列が出来ていた。

(2017年8月18日撮影)
船同士は無線で情報のやりとりをしているが、この日の無線からは、「このクジラはとてもアグレッシブだから、気を付けた方がいい」という内容が相次いでいた。
私は直接出逢ったことはなかったが、過去にもアグレッシブなクジラというのは出現している。
この日のクジラは、人に執拗に寄ってきたり、追いかけてきたりしていた。
今回はメスを守ろうとしたオスがアグレッシブに動き回っているということだった。
しかしこうなったクジラはしばらくの間この興奮状態が続くので、この日は全隻がこのクジラと最終的には泳ぐことができた。
今回に限って言えば10時間近くもアグレッシブな状態が続いていたということになる。
私たちより4隻前に順番待ちをしていたリサマリからの無線で「TAKA!RUN!」という越智さんに向かって「クジラから逃げろ!」と叫ぶスキッパー(船長)の声が聞こえてきていた。
そのあと私の携帯に届いたメッセージが、「Dangerous whale, be carful」というものだった。
他の船のゲストはクジラに当たってウエットスーツが裂け、足を負傷したといい、また違う船のゲストもクジラに当たったと無線で情報が入っていた。
どう危険なのかは入ってみないとわからなかったが、ゲストには近づきすぎないこと、絶対にクジラに当たらないことをお願いし、海に入った。
入水してしばらくすると、水深20mくらいのところに止まっていたその“デンジャラスホエール”が私たちに向かって浮上してきた。
普段ならシャッターチャンスなものも、いつもより少し距離をとった。
すると、そのデンジャラスホエールは、一人のゲスト目がけて突進していった。
(ウリャャヤーーー!みたいな感じだろうか)
と、ここで気が付いたのは、私たちの目の前には1頭しかクジラがいないこと。
ペアのはずなのでもう1頭がどこかにいるのだが、この時は姿が見えなかった。
デンジャラスホエールと情報は入っていたものの、1頭がデンジャラスなのか2頭ともデンジャラスなのかは聞いていなかったので、水面に顔を出して、もう1頭がどこから浮上してくるかわからないので360度気を付けてほしいと伝えた。
(何度も腕を突き上げるシーンを目撃した)
結局、私たちが海に入っている間に、もう1頭が浮上してくることはなく、うすぼんやりと水底に影が見えただけだった。
この日は朝からの捜索時間も入れて約9時間待って、たった2分間のスイムだったが、それでもとても印象に残る2分間だった。
(その後はドーンと逆立ちをしていた)
親子と3頭のまったりしたヒートランで癒される
翌日の8月31日は、HUNGA島の外洋、それもかなりの沖合でヒートランに遭遇した。
はじめは、3頭のクジラと複数のイルカと泳いでいる船があるというのでそちらに向かっていた。
ところが、私たちが着いたころにはクジラもイルカも見失ったと言っていて、改めて探すことになった。
ゲストとバウ(船首)で話をしながら海を見ていると、船から100mくらいの近距離で小さな背びれが見えた。
そこにいる!と指をさしたが、クジラかイルカかはっきりしなく、少し様子を見ていると、突然複数のブローがあがった。
前の船が見失った3頭が見つかって、かつ先ほどの背ビレはイルカだったのではないかと思いながら海に入ると、クジラの親子に3頭のエスコートがついていて、私たちの目の前を泳ぎ去った。
通常であれば、追いかけるのを諦めで船に戻るのだが、なんだかとてもゆったりしていたので、追いかけてみると、なんと5頭が水深15mくらいのところに止まっていた!
(子供を含め5頭のクジラ)
水面に浮いて数分待っていると、5頭はゆっくりと移動を始めた。
もちろん並走できるスピードではないものの、追いかけると、また5頭は水深15mくらいのところに静かに沈んでいき、止まった。
形としてはヒートランになるが、まったくヒートアップしていないヒートランだったおかけで、こちらもゆっくりと観察することができた。
至福なひと時だった。
だが、今週はババウ島の近海にクジラの数が少なく、見つけるのにとても苦労した。
1つのクジラに10隻以上もの行列ができることもあり、クジラへの負担も気にならないわけではなかった。
それでも、アグレッシブだったり、のんびりまったりだったり、いつも新しい出逢いと経験をさせてくれるクジラに逢いたいと、また海に出る。